東京物語

1953年の松竹映画、小津安二郎監督作品です。
何度か見ているし、
いつだったか図書館で各カットごとに解説してある分厚い本をがっつり読んだので、
もう、流して見るだけかな、と知ったかぶり頭で思っていたのですが、
いやいや、さすがは世界の東京物語、最後までガン見でした。
名作と言われるだけのことはあります。

「一人息子」でも控えめに描かれていた親心、
子供の立身出世を願って東京へ出したのに、
親の期待に充分に応えきれていない子供たちに対する、
落胆と諦観がミニマムな表現で描かれていて胸を打たれます。
微妙な距離感を保って、置物のように並ぶ笠智衆東山千栄子の老夫婦が、
「とうとう、宿無しになりましたね」と語り合うシーンはとてもせつないです。
自分的にはこのシーンがこの作品のクライマックスではないかと思います。
一貫してホームドラマを描きながら、自身は家庭をもつことがなかった小津の、
家庭に対するシニカルな視点を感じて、ちょっと戦慄を感じました。

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レニングラード・カウボーイズ

レニングラード・カウボーイズ・ゴー・アメリカ 1989年
レニングラード・カウボーイズ、モーゼに会う 1994年
アキ・カウリスマキ監督のフィンランド映画です。

なんだか尖端鋭いリーゼントに尖がり靴で大編成のバンド、
レニングラード・カウボーイズが胡散臭いマネージャーに連れられ旅をするロード・ムービーです。
2作合わせて往路、復路って感じです。
何を見てもついクスっと笑えてしまうのはカウリスマキの魔術でしょうか。
なんでこんな映画を撮ってしまったかって?私自身も楽しみたかったからだよ、
とかなんとかどこかで言っていそうな感じ。
笑える度はかなり高いと思いますが、劇場向けの作品ではないかも。
おうちで何かしながら眺めるくらいがちょうど良い付き合い方かも。
バンドの演奏もヘタウマっぽいし、
盛り上がらない客席は、エキストラの手配をケチったのかなとか邪推しながら見ていました。

「・・・ゴー・アメリカ」でのマッティ・ペロンパーが若い!
うらぶれ感が強い映像のこちらの方が、自分的には好みでした。
反美形派と思われるカウリスマキの映画に欠かせぬ不美人の女優さんは登場しない、
とってもヤロウの世界な作品でもありました。

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欲望のあいまいな対象

1977年のフランス・スペイン合作映画。
ルイス・ブニュエル監督の遺作です。
初老の紳士が若い女に溺れる・・・ただそれだけの情痴モノで、
「痴人の愛」とテイストが近いといえば近い。
おあずけ喰らうところも似てるっちゃ似てる。
当初はマリア・シュナイダーをキャスティングする話があったそうですが、
えーっ、それはないでしょう。
彼女のまん丸な童顔であそこまで冷徹な女の役を演じても説得力に欠けると思う。
彼女の場合、裸だって観客は飽きるほど見ているのだから新鮮味がないし。
っていうか、コンチータの役はふたりの女優さんが演じていたのですね。
態度にギャップがあり過ぎると思っていましたが、納得です。
コンチータは最強と思ったけれど、
意表を付くラストは、やっぱりブニュエルの方が一枚上手かも。
無くてもどうでもいいラストシーンと思いましたが。

ブニュエルの作品は「アンダルシアの犬」が強烈過ぎて、
それに較べたらどれを見ても優等生的な表現の作品ばかりに見えるのですが、
これが遺作とご本人がわかっていたとしたら、
もうちょっとアナーキーな作品になっていたのではないかと思います。
枯れてるんじゃなくて、まだまだ通過点な作品って位置付けかな。
表現手法が古臭かったし、完成度もイマイチ。
次の作品に期待したかったところです。

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モンガに散る

2010年の台湾映画です。
友だちがすごーく良かったと熱くお勧めするので見たのですが、
ヤクザ映画に耐性がないもので、ところどころ早回しで見ました。
けど、86年頃という時代設定で、
廟街のいかがわしげな雰囲気は良く描けていたと思います。
聖子ちゃんカットの「ギャル」が出ていましたが、
香港映画みたいに半裸状態じゃなかったし、
主人公の若い極道の子たちが山籠りして戦闘技術を学ぶシーンとか、
結構、ストイックに描かれていたと思います。
台湾映画も成熟期を迎えたのかな、
他のどこの地域とも違う台湾らしさが良く出た作品と思います。

つい、エドワード・ヤン「カップルズ」と較べながら見ていましたが、
極道者とただの不良少年じゃ話が全然ちがう。
若いとはいえ、極道者の強烈な土着志向を感じました。
台湾人のメンタリティって老若問わず任侠道に寛容と思うので、
この映画は相当ヒットしたのだろうな。

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恋するブラジャー大作戦(仮)

2001年の香港映画です。
うんこだちんこだで喜ぶ小学生向けのタイトルですね。
内容もタイトルの域を出ていない、良くも悪くも香港映画クオリティ。
この内容で続編が出るほどヒットしたらしいから、民度が高くないですね。
もうしわけないが、くだらな過ぎて脳が溶けるかと思った。
「クレヨンしんちゃん」の実写版程度に捉えた方がよいかもです。

カリーナ・ラウ「欲望の翼」が一番良かった。
なんでだろうか考えてみたら、あの京劇ばりのメイクが合っていたと思うのです。
つり目アイラインが似合うんだ。
この人、素の顔はドングリ目で華やかな顔立ちではないから、
どんな役を演じていても(それがまた、香港人の生活に身近な働く女性だったりすると)、
なんかいつも疲れて見える。
有名だけれどスターには見えない。
どっちかっていうと脇役に回ってお母さん役が合ってると思うのだけど、
彼女にそこまでさせたくないのかな?
地元ではSK-IIの広告をやったりしているみたいだから。
桃井かおりに母親役振るバカいないのといっしょかな。
だけど、そこがコン・リーになれない理由なんだろうな。
コン・リーは一度も好きと思ったことがないけれど、
子供のために泥水の中に進んで飛び込む母!って感じがする。
だけどカリーナ姐さんにそんな母性を感じたことがない。
気に入らないとキーキー喚く面倒な女にしか見えないのが残念。

面倒だのきらいだのいってますが、カリーナ姐さんもコン・リーも私と同じ年。
がんばって皆ですてきなオバさんを目指そうね。

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死刑台のエレベーター

1958年のフランス映画。
ルイ・マル監督のデビュー作。
25歳でこの完成度って、いったい何者?と思う。
この人のすごいところはどの作品も一定の完成度をキープしていて、
一作ごとに作風がガラッと変わるので、見ていて飽きないし、
ヌーベルヴァーグの作品群ではエンターテイメント性が強いところが強みと思います。
(そのせいかカリスマ性では若干劣るような気がします)

「鬼火」のモーリス・ロネとねんごろになって、夫殺しを企てるジャンヌ・モロー
この人は存在そのものが神話ですね。
それにしても夫殺しなんて、恋愛至上主義で、よくよく考えたら良いオトナがやることじゃない。
けど、そこを堪えないとこの作品はおもしろくない。
夫殺しはうまくいったかにみえたけれど、ちょっとした手違いでとんでもない事件に発展してしまう・・・。

マイルス・デイビスの即興演奏の付け方がすばらしいです。
ジャンヌ・モローが雨に打たれて恋人の名を呼びながら夜の街を彷徨うシーンは、
映画史に残る名場面と思います。
恋人に囁きかけるジャンヌ・モローの声も甘過ぎず、オトナの恋愛を感じます。

しかし、うまくまとめてあるな、ルイ・マル。
これが彼の作品とは気付かなかったくらいです。

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アニエス・Vによるジェーン・B

1987年のフランス映画。
アニエス・ヴァルダ監督によるジェーン・バーキンへのインタビュー映画です。、
この人について、セルジュ・ゲンズブールと結婚してたとか、
エルメスのバーキンの人でしょくらいしか認識がなかったから、
イギリス人だったのも知らなかったし、
男顔なのにビックリでした。
けど、80年代って時代を考えたら、
あんな見た目イカツい女性が旬だったのだろうな。
日本でも浅野温子とか流行ってたような気がする。
共演したい役者を問われて、
われらがジャン=ピエール?レオ君を指名して、
万年青年過ぎるレオ君とデートするシーンもあったので、ちょっとうれしかった。
レオ君、相変わらず自分勝手だったけれど。

全体的に絵画的な作りの映像で、
インタビュー映画としては退屈しなかったです。
コワモテだけど内面的にはフェミニンな自分アピールしていたように思うけれど、
今見たからか、80年代的な女性像にはあまり興味が持てなかった。
バーキンという人を扱うには40歳という年齢は早かったのではないかとも思いました。
みんな彼女の人となりよりもバッグに興味があるのだろうから、
そこんとこをプッシュしてほしかったかな。
それは監督としては絶対に避けたかったのだろうけれど。

アニエス・ヴァルダという監督。
夫であるジャック・ドゥミ監督の若干通俗的な作品作りに較べると、ニッチな線を狙っている人と思います。
そこにはいつも荒涼とした空気が流れているような。

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出来ごころ

1933(昭和8年)の小津安二郎監督作品。
サイレント映画なのだから当たり前といえばそうなのだけど、無音。
冒頭からして浪花節かなんかを見ているみたいで、
長屋モノみたいなこの雰囲気、アウェイだなと思ってたら、
ちょっと若めの飯田蝶子が出て来て、あの歯並びでガハハと笑ってるし、
やっぱりここでも「かあやん」なんて呼ばれているし、
人情話は苦手な雰囲気かも、
と、若干肩を落としていたら主人公の喜八っあんの友だち役の大日方傳演じる次郎が、
ちょっとムサっ苦しいながらも、ガタイが良くて顔立ちもかなりの男前。
小津作品でここまで二枚目俳優が存在感を見せることは珍しいのでは。
次郎の夢を見てしまいそう。
もう、完璧に一目惚れに近いものがあります。
これだけでも見た甲斐があったと機嫌が直りました。

貧乏暮らしの長屋人情喜劇で、
この頃から既にローアングルにこだわっている、
小津の「演出職人芸」とでも言ったらいいものか、
これがこの人の持ち味なのでしょうね。
それにしても、だ。
喜八っあん、次郎が北海道で働くことに決めたって、
北海道ってどんだけ外地扱いよ。と、ちょっと笑えました。

アキ・カウリスマキ「白い花びら」を見たときにも思ったのですが、
サイレント映画というミニマムな表現には役者のフィジカルな表現が必要で、
演出する側、される側双方大変緊張感があったと思います。
それでもこれだけおもしろい作品を作ることが出来たのは、
やはり小津って天才肌の職人さんなんだろうな。

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ボッカチオ’70

1962年のイタリア映画。
4人の監督によるオムニバス映画でした。
それぞれの作品にそれなりの尺があるので、
200分を超えていたようですが、
イタリア式コメディっておおらかでいいな。
飽きずに見ることができました。
色の出方も60年代のフィルムらしいノペっとした感じが好みでした。

マリオ・モニチェッリの「レンツォとルチャーナ」
高度成長期を支える若い力、なんてフレーズが頭に浮かびました。
若い新婚カップルの職場であるビスケット工場といい、
ふたりが行くダンスホール、プール、映画館、
どこまで行っても、ものすごい人だかり。
そんなに行くトコないのか疑問。
新婚さんには、まだ決まった住所が無くて、
親のアパートに居候しているので、欲求不満でキレまくり。
移動手段が3輪オート?とか、レトロで背伸びしない庶民的な作品でした。

フェデリコ・フェリーニの「アントニオ博士の誘惑」
堅物なアントニオ博士は街中で見かける、
すべての肉情的なものに果敢に挑んでゴリ押しで勝っている様子ですが、
ご自分のアパートから見える広場の巨大看板の誘惑に抗えず・・・。
フェリーニおそらくこの作品、相当楽しんで撮ったのではないかしら。
このぐらいの長さの作品がこの人の作品を楽しめる限界かも。
「水爆女優」アニタ・エクバーグがすごいことになっていましたが、
こんな怪物扱いされたからスターになれなかったのではないかと、
若干、アニタ嬢には同情します。

ルキノ・ヴィスコンティの「仕事中」
だめだめ。これ失敗作と思う。
修行中のヴィスコンティが喜劇寄りの演出を試みたと思うのだけど、
カジュアルな貴族の結婚生活、にしか見えなかった。
ロミー・シュナイダーは良かったけれど、夫役があの顔では、間男みたい。
でもってロミーも世の中ナメくさってるし。
結局ロミーがやりたがっている「仕事」って、セックスのことですか。
考えが甘い。
ヴィスコンティもうちょっと自分らしい演出をしてほしかった。

ヴィットリオ・デ・シーカの「くじ引き」
出てくる男はみんなカスみたいで、ソフィア・ローレンひとり勝ちな作品でした。
一体何をどうしたらあの肉体美が作れるのか、
とにかく肉弾戦状態。
イタリア男にとって夢の女性なんだろうな、この人って。
肉体美だけではなくて、母性のようなものも感じさせてくれる。
気持ちはわかるかも。
なんてことはない話だけれど、この人無しでは成立しなかった作品と思いました。

どれもおもしろかったけれど、
自分的にはやっぱりアニタ嬢に一票です。
この人の旬の時期があまりにも短かったので。

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愛の神、エロス

2004年アメリカ、イタリア、フランス、中国合作映画。
オムニバス映画だったのですね。
WKWの強烈なエロエロ映画と思っていました。
ソダーバーグにもミケランジェロ・アントニオーニにもあまり関心がないので、WKWの作品だけガン見でした。

「若き仕立て屋の恋」って邦題、
パトリス・ルコントのアレをパクったかな。
たしかにタイトルどおりの話だから、それはそれでいいのだけど、
エロを追求するなら、原題のThe Handでよかったのではないかと思いました。

コン・リーが、自分的にアウト。ガサツな立ち居振る舞いは、さすが大陸の女優さんって感じで、
薄幸そうな演技もできるというのはわかったけど、
やっぱりウソ泣きだろう?みたいな。
チャン・チェンはビックリするほど垢抜けしていました。
エドワード・ヤンのカップルズ以来の美形役かも。
トニーさえ出てなかったら、チャン・チェンって2枚目なのよー。
全身のバランスもとてもきれいだし。
現状、抱かれたい男ナンバーワンはチャン・チェンかも知れない。

WKWはインタビューで花様年華とも、2046とも違う作品に仕上がったと語ってましたが、いつもWKWの作品を貫いている緊張感のある濃厚さはここでも健在でした。
1960年代香港って1930年代上海に匹敵するほどの魔都だったのでしょうね。
そんな空気感が漂ってくる作品でした。
これってWKW的には、お得意の世界観なのでは。
随所に挟まれる、忙しそうな仕立て屋のシーンが、香港だなぁ、みたいな感じがしました。
白いランニングシャツで作業しているチャン・チェンもエロかったです。
いや、ほんとに抱かれてみたい。

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